アンドリュー・ネイサン、ブルース・ギリ『中国権力者たちの身上調査』

第1章 秘密文書を持ちだしたのはだれだ
第2章 静かな権力闘争の舞台裏
第3章 最高権力者三人の『身上調査」
第4章 実務派実力者六人の毀誉褒貶
第5章 わき役たちー若手・女性幹部・党長老
第6章 江沢民「権謀術数』政治の功罪
第7章 国内改革と民主化にどう立ち向かうか
第8章 対米・対日・対台湾外交の本音
第9章 第四世代が描く『中共の自画像」
コロンビア大学政治学者アンドリュー・ネイサンの「CHINA'S NEW RULERS - THE SECRET FILES」の翻訳。原書は2003年、翻訳は2004年8月出版だが、最近起きている汚職事件の背景がよく理解できる良書。ネタ本は香港で出版された宗海仁『第四世代』、その情報源は党中央組織部の身上調査とされる。これまで私がメディア報道や中国人からの情報で理解してきた構図とは若干異なるが以下整理。
保守 江沢民派(江沢民、曾慶紅、李長春賈慶林、?菊、曾培炎、陳良宇、簿煕来、唐家旋)、李鵬派(李鉄英、羅幹、姜春雲、陳希同)
リベラル派(胡錦涛温家宝、呉官正、喬石、李瑞環、朱鎔基、王兆国劉雲山
利害関係によって繋がったり敵対したり、中国の権力構造はやはり三国志演義
この本によれば曾慶紅は特に策士である。江に従い、楊ファミリーや喬石、李瑞環の引き摺り下ろしに暗躍した。三个代表も彼の発想だったらしい。
また、中国の指導者がアメリカの政治家よりも幅広い視点で国際問題を的確に把握しているという指摘も示唆的である。アメリカ外交を基軸にヨーロッパ、日本が最重要、インド、パキスタン、東南アジア、ロシア、さらにアフリカ、南米。国内問題は新彊ウイグルがもっとも深刻な課題、台湾はアメリカとの問題、チベットもDalai Lamaの死去により統治が容易になると見ているなどという指摘はなるほどと思わせた。
ネイサン教授の本をほかにも探して読んでみよう。